聞き書 長崎の食事 諌早・西東彼杵の食より
夏の田の手入れは苦しい仕事である。朝の涼しいうちでなく、暑くなってから田に入り草取りをする。こうすれば、温かい水が底まで入り、稲の育ちがよいからだ。三番草までとる。また、田の面に油をさして虫追もする。稲の葉で目を突いたり、ひるにたかられたりする。水車を踏んで掘割から田に水をかける仕事もある。足に力のいる仕事である。暑い盛りの土用時分は昼休みを少し長くとって日中(休養)する。主婦はその間に赤ん坊に乳をふくませたり、洗濯をしたり、ゆっくりとは休めない。こんなに暑くて苦労な仕事も秋の実りにつながるので辛抱する。
このころになると、干潟では、あげまきがたくさんとれる。島(干拓地の畑)でとれる島うりもおいしい。干拓地に含まれている塩の加減なのであろうか。
■昼
ぶなぞうめんにすることが多い。煮干しや塩くじらをだしにして、汁を多めにぶな(かぼちゃ)を煮つけ、中にそうめんを入れる。ぶなの甘みと、そうめんの塩気がよく合って食べやすい。このころ、高菜漬やたくあんが古くなって、においが出てくるが、これを油炒めにして出すと、みんな喜んで食べる。中よけには島のまくわうりをよく食べる。井戸に冷やしたものは格別おいしい。
写真:夏の昼食
上:〔左から〕うりの塩漬、高菜の油炒め/下:〔左から〕麦飯、ぶなぞうめん
出典:月川雅夫 他編. 日本の食生活全集 42巻『聞き書 長崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.25-26