聞き書 岐阜の食事 飛騨白川の食より
風が涼しさを感じさせて秋がはじまる。桑のあるかぎり蚕を飼い、山には木の実が熟れ、とちの実や栗をひろいに行く。畑の野菜の実入りもよく、自然の恵みをこれほどまでに豊かに受けられるときはない。
山峡の秋は短い。秋のとり入れは、同時に冬じたくへとつながっていく。
■昼―朝の残りごはんと味噌汁、じゃがいもの煮っころがし、漬物
朝の残りのひえ飯と味噌汁、じゃがいもの煮っころがしが食膳に出される。径一寸ぐらいの大きさのじゃがいもである。よく水洗いし、皮のついたまま油で炒り、たまり汁で煮つめていく。皮にしわが寄って味が少しいもにしみこんでいる。皮ごと食べられておいしい。
出典:森基子 他編. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.74-75