聞き書 愛知の食事 西三河(安城)の食より
寒に入ると、一年分の味噌用の味噌玉をつくり、いも切干し、ねじ干し大根(皮をむいた大根の丸干し)、切干し大根もつくる。干し大根は、春野菜がとれるまでのつなぎのおかずとして欠かせない。
米はくず米から先に食べて、上米は大切に用い、米も麦も次のとり入れまでは十分に残しておく。大豆や野菜なども、一年間の食べ量をあれこれ計画してつくるのが、主婦の大事な仕事である。
また、寒くなると甘酒をいつでも飲めるようにつくっておく。客が来たり、家族がそろったときに熱い甘酒を飲むのもよし、夜なべ仕事のあとに焼きもちを入れて食べながら飲むのもまた、おつなものである。ほかに、ぼろ(あられ)、おへぎ(かきもち)、焼きもち、焼きいも、いも切干しなどを間食にしている。
■夕飯―くず米飯、煮味噌、漬物
冬は日が短く、夕方になるとすぐにあたりが暗くなる。主婦は少し早めに仕事を切りあげ、夕飯のしたくをしながら風呂をわかす。
ごはんはおはちに入れたまま、茶釜でふかして熱くする。ふかし方はまず、おはちのふたをとって、逆さにしてもごはんが落ちこぼれないように濡れぶきんをかけてしばる。ふきんのほうを下にして、茶釜のふたをとってその上にのせ、蒸気で温める。
寒い冬の夜のおかずは、温かい煮味噌を毎日のように食べる。野菜と味噌とだしを一緒に入れて煮こめばよく、味噌はそのまますらずに使えるので、疲れた主婦にとって手間のかからない料理である。煮味噌はにんじんとねぎがよく合う。こんにゃくもよく合うので、たまには買って入れる。
寒い晩には、おじやもつくる。米から味噌味で煮る大根おじやとか、残りごはんを味噌汁の中に入れてさっと煮たおじやなどである。
たまには、さつまいもを入れていもがゆをつくる。さつまいもが甘いので、おかずは梅干し、塩からい漬物などをとりあわせる。
写真:冬の夕飯
膳内:くず米飯、白菜漬とたくあん漬、煮味噌(にんじん、ねぎ、白菜)/膳外:梅干し、らっきょ漬
出典:星永俊 他編. 日本の食生活全集 23巻『聞き書 愛知の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.186-190