聞き書 岐阜の食事 奧揖斐(徳山)の食より
■夜――ひえ飯、昼の残りの味噌汁、さんしょ豆、きゅうりの一夜漬、こしもの塩煮
ごはんはひえ飯だが、こしもの塩煮を常におき、ごはんの食い助けにする。汁は昼の残りもの、お菜には、大豆とさんしょ(さんしょう)を煮る。さんしょ独特の味わいが豆とあいくさになり、食欲をそそる。漬物は、季節のきゅうりの一夜漬で、大ぶりに切って盛る。
六月という月は、米、雑穀ともに、そろそろ底をつきはじめ、頼みにしてきたこしもの量も限られてくるといった端境期である。そんなことから、「六月は食うものがないので、鬼が出る」とまでいわれている。
田畑や山の仕事も暑い時期だけに、ごはんはひえと米を中心にすごしたい。少ないそれらを補うため、まだ早いとわかっていても、こしもの株を掘りあげる。七月半ばになれば、あかびえの熟した穂をちぎることができ、いくらかは、明るい見とおしが開けてくる。
写真:夏の夕食
上:さんしょ豆、きゅうり漬/下:ひえ飯、菜の味噌汁。膳外はこしもの塩煮
出典:森基子 他編. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.227-228