聞き書 島根の食事 宍道湖・中海沿岸の食より
■朝飯――麦飯、しじみ汁、さやえんどうの煮もの、きゅうりやなすの浅漬
春は比較的野菜が少ないが、暑くなるにつれてきゅうり、ささげ、かぼちゃなどの野菜が豊富になってくる。朝はよくしじみ汁をつくる。土用しじみの味は格別である。冬は味噌仕立てで味を濃くするが、夏は澄まし汁にすると、しじみの味がいっそう引き出され、あっさりとした汁になる。そのほか、青い葉の出た新たまねぎ、さやえんどう、なすやかぼちゃなども味噌汁の具にする。野菜の味噌汁にはだんごの粉をこねて親指大に丸めただんごを入れ、だんご汁にすることもある。また、野菜を、焼き干ししておいたごず(はぜ)や、いりこ(煮干し)のだしで煮て食べることが多い。
きゅうり、なすは食べやすい大きさに切り、前の晩に薄塩をふっておき、翌朝しぼってしょうが、花がつお、醤油で食べると新鮮で歯ごたえのさわやかな浅漬が食べられる。このころに出るみょうがを細かく切って浅漬に混ぜると独特の香りが楽しめて食欲を増す。
写真:夏の朝飯
上:さやえんどうの煮もの、なすときゅうりの浅漬/下:麦飯、しじみの澄まし汁
出典:島田成矩 他編. 日本の食生活全集 32巻『聞き書 島根の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.26-29