聞き書 愛知の食事 尾張(稲沢)の食より
■田植え
六月下旬から七月のはじめに田植えがあって、このころが一年中で一番忙しい時期である。女は、田植えどきには朝三時ごろ起き、四度飯の準備でてんてこ舞いである。
朝飯は、白いごはんにおつけ、こうこである。
小昼(午前中の軽い食事)には、梅干し入りの白いごはんのおにぎりや、ごはんにしその葉を細かくきざんで混ぜたおにぎりを持っていく。
昼には、ごぼう、かしわ、にんじん、ちくわなどの入ったかきまわし(五目飯)を出す。
夜は、すし飯に、しめさば、きゅうり、紅しょうがのせん切り、薄焼き卵の短冊切りなどを散らしたちらしずしにし、忙しい一日の骨休めをする。
家によっては田植えもちを搗き、あんころもちにして食べるが、手間のない家では農あがりに搗いて食べる。
写真:田植えどきの食事
左:小昼のおにぎり/中:昼飯のかきまわし/右:晩飯のちらしずし
出典:星永俊 他編. 日本の食生活全集 23巻『聞き書 愛知の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.135-137