聞き書 長崎の食事 諌早・西東彼杵の食より
田の草取りをすませ、お盆もすぎれば、稲刈りまでの間に畑仕事に精を出す。冬野菜の大根、もちな、白菜、そばの種播きをすませる。冬野菜は播きどきを何回かにずらすと長く収穫できるが、そばは二百十日を守らないと、その前は殻取り、後は花取りになって、かんじんの実取りにならないという。また、秋じゃがも植えつける。
そして、いよいよ稲刈り。子どもたちも農繁期休みになり、一家総出で刈って、二日ほど干してから稲小積みをする。そのそばから、裏作の麦つくりの準備をし、いも掘りと続く。一〇日ほど小積みしておいた稲束を家に運びこみ、稲こぎ。唐箕でわらしべなどを飛ばし、ねっぷき(小縄で編んだむしろ)に広げて干しあげる。
■夜
干拓地にある掘割の水落としでとれたふなと大根の煮つけや、ぶな、はすいもの茎、いもんこなどを煮しめにしたものが菜になる。はすいもの茎、いもんこはもう少し手間をかけて、味噌、ごま、それに豆腐でも入れたおよごしにすると、みんなに喜ばれる。いもんこのねばりが全体をまとめ、口ざわりがなんともいえない。
写真:秋の夕食
上:およごし(ぶな、はすいも、いもんこ)/中:ふなんこぐり(ふなと大根の煮つけ)/下:麦飯
出典:月川雅夫 他編. 日本の食生活全集 42巻『聞き書 長崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.27-28