聞き書 熊本の食事 阿蘇の食より
■晩――麦飯、里芋の煮つけ、とろろ汁、白菜の白あえ、大根葉の浅漬
秋の夜は長く、日の暮れるのもつるべ落としに早い。女は田んぼから急いで帰り、夕食のしたくにかかる。昼間、いも水車で泥を洗い落とした里芋を、大根やにんじんと煮つける。白菜もやや大きくなっているから、間引きしてはゆでて、白あえにしたりする。
仕事の合い間に山で見つけた自然薯は、秋を代表するごちそうの一つで、忙しい収穫の夜の食卓を楽しくする。自然薯を使った、簡単でだれにでも好かれるものがとろろ汁である。ていねいに洗って泥を落とし、すり鉢にすり落としてよくすり、味噌で味つけしただし汁を少しずつ入れてのばしていく。昔から「麦飯にとろろ汁」といわれ、麦飯にかけて食べる。
写真:秋の晩飯
上:大根葉の浅漬、里芋の煮ころがし/中:大根葉の白あえ/下:麦飯、とろろ汁
出典:小林研三 他編. 日本の食生活全集 43巻『聞き書 熊本の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.32-33