聞き書 愛媛の食事 肱川流域(大洲)の食より
■昼――麦ごはん、すり大根、いりこ、しょいのみ、お葉漬、こうこ
百姓は忙しいから、一〇時の昼食は簡単なものですませる。いりこ味噌や少々のいりこがあれば、平素よりましなおかずである。「百姓の早食い、芸のうち」という言葉があるように、かきこむようにすませる。若嫁は赤ん坊に乳を飲ませながら食べたり、忙しいときはおむすびを立食いすることもある。
舟乗りたちの弁当は、わっぱか柳行李に詰めた丸麦飯としょいのみ、こうこ(たくあん)が主で、いりこが添えてあればごっつぉうぶり(ごちそう)である。
焚きもんこりに行って山で食べる弁当も舟乗りたちの弁当とほぼ同じで、すきっ腹にはとてもうまい。子どもたちは疲れると、おなご竹にばくさ(雑穀もち)やかきもちをはさんで焼いたり、焼きいもをしたりして楽しむ。
写真:冬の昼食
上:〔左から〕しょいのみ、かぶのお葉漬/下:〔左から〕麦ごはん、いりこ入りすり大根/右の皿:こうこ
出典:森正史 他編. 日本の食生活全集 38巻『聞き書 愛媛の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.75-76