聞き書 佐賀の食事 佐賀平野(クリーク地帯)の食より
■夜――実だくさんのだご汁、ふなと大根の煮つけ、大根葉のおよごし
寒い夜は、だご(だんご)汁が一番からだが温まってよい。あつあつのだご汁をふうふういって食べるのは、なんともうまい。だご汁の実は、にんじん、里芋、ねぎ、大根など実だくさんにして、ときには小豆を少し入れて煮る。野菜が煮えたら、メリケン粉を練っただごを手でつん切って入れ、味噌味にしたり醤油味にしたり、そのときどきによって味を変えて食べる。
また、焼きふなご(小ぶなの焼干し)の煮つけを酒のつまみにして、熱めの燗をつけた酒を一杯飲むとからだも温まり、昼間の寒い田んぼの疲れも吹きとんでしまう。ふなと大根を一緒に煮つけたものや、いもの子(里芋)の味噌煮や、大根葉のおよごし(ごまあえ)なども夕飯のおかずにつくる。
夜の食事もすみ一息つくと、土間で男も女も夜なべをする。男はわら細工の副業に、女は家族みんなの繕いものやつぎあて、編みものや縫いものに精を出す。それが終わると女も縄なえ機械で縄づくりやかまぎ織りに励む。夜なべ仕事で腹もへってくると、焚き火で焼いたとういもなどを食べ、お茶を飲み、ひととき手を休めてほっと息をつく。火鉢で手を温めながらのわら仕事は冬の間の日課で、三月末ごろまで続く。
写真:冬の夕飯
だご汁、ふなと大根の煮つけ、大根葉のおよごし
出典:原田角郎 他編. 日本の食生活全集 41巻『聞き書 佐賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.17-20