聞き書 島根の食事 城下町津和野の食より
■ひな祭り
女の子の節句、ひな祭りは四月三日にする。財間家では蔵から人形を出して座敷に飾り、紅白の菱もちを搗いて、おいり、白酒、桃の花とともに供える。おいりは、黒豆、あられ、米を炒って砂糖醤油を煮つめてからませたものである。
ひな祭り用三重のお重は子ども用で小さく、下段に赤飯、中段に卵焼き、かまぼこ、酢ばす、みかん、上段にさつまいものきんとん、羊かん、さつまいものてんぷらなどを盛り合わせる。大しぼのちりめんでつくったはし袋を着物の懐にはさみ、手提げのついたお重を持って友だちと家々を回るのは、女の子たちのなによりの楽しみである。
写真:ひな祭りのお重
左の重:みかん、酢ばす、卵焼き、かまぼこ/中の重:きんとん、羊かん、てんぷら/右の重:赤飯
出典: 島田成矩 他編. 日本の食生活全集 32巻『聞き書 島根の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.252-253