聞き書 岐阜の食事 古川盆地(国府)の食より
■海の魚
山国でも、魚はもっぱら越中から入ってくる。一部には無塩の魚もあるが、これはごくごく限られた裕福な家用であり、ほとんど塩ものか干ものである。干どんぼ(背開きにした大きな干しいわし)、たたかれいわし(大きめの干しいわし)、干いわし、塩ます、塩いか、煮いか、干しえびなどをぼてふり(行商人)から購入する。
塩いかの胴いっぱいに詰めこまれた塩は、漬物や飼い葉に使うし、塩抜きの水さえも煮しめに使うとうまくなるといって、すてないで利用する。客用には、塩鮭を塩抜きして酒粕に漬けこみ、おいしくする。「無塩ものが食える身分になりたい」というのが飛騨びとに共通する願いである。
写真:塩いか
出典:森基子 他編. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.48-49