聞き書 大分の食事 宇佐平野の食より
いわしは日ごろから、豊前の海から振り売りのおばさんが持ってくるのをよく買うが、五月五日の節句や祭りなどにはいわしの丸ずしをつくる。いわしの生きのいいものが手に入れば、ふだんでもつくることもある。
前の日に、買ったいわしの頭をとり、はらわたを出して、開いたまま一晩塩をしておく。翌朝、水でよく洗い、砂糖を入れた酢に一、二時間つける。頭はとらずに使うこともある。
米を炊き、いわしをつけておいた甘酢を合わせて酢飯をつくる。開いたいわしの身側を上にして置き、酢飯を腹に詰めるようにのせ、いわしを上に向け直して形をととのえる。食べるときに適当な大きさに切る。
出典:波多野道義 他. 日本の食生活全集 44巻『聞き書 大分の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.259-260