こけ

連載日本の食生活全集

2020年09月16日

聞き書 石川の食事 白山麓の食より

秋もまた、出作り地は自然の恩恵を十分に受ける。とくにこけ(きのこ)は出作り地の周囲にぶな林が広がっているので、なめこやまいたけがたくさんとれる。そのほかにも、しいたけ、ますごけ(ますたけ)、かのした(ぶなはりたけ)、すぎみみ(杉の木の切り口に生えるきのこ)、もちゃせ(ならたけ)、きくらげなどがとれる。いずれも煮ものや汁の実として食べることが多く、なかにはあえものにするものもある。保存はたいていのものが塩蔵で、使うとき塩出しして、生と同様に料理する。しいたけ、きくらげは乾燥させる。
■なめこ おもに汁の実にする。報恩講のごちそうの一つ、こくしょ(一五七ページ参照)をつくるとき、金時豆や固豆腐と一緒に使う。
■まいたけ 味がよく、煮しめや汁の実にする。
■しいたけ 乾燥して保存し、年中使うが、生、干したもの、どちらも煮しめによく使う。
■ますごけ 煮しめ、汁の実としてよく使われる。
■かのした ふき、わらび、ぜんまいなどと一緒に煮しめにして食べる。
■すぎみみ 生のすぎみみはさっとゆでてから水を切り、よくしぼって、醤油をかけて食べる。また、くるみやからしであえて食べる。
■もちゃせ 煮しめにもするが、多くは汁の実にする。
■きくらげ 乾燥しておいて、報恩講や祭りなど行事のときにもどして使う。

写真:まいたけとふき、ぜんまいの煮しめ

 

出典:守田良子 他. 日本の食生活全集 17巻『聞き書 石川の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.163-163

関連書籍詳細

日本の食生活全集17『聞き書 石川の食事』

守田良子 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540880094
発行日:1988/06
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

四季折々の素材をこまやかな味わいに仕上げる古都・金沢の食、焼畑からの雑穀、山菜、木の実、熊など獣が食卓をにぎわす白山麓の食など「加賀百万石」の地の多彩な食の数々。
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