聞き書 岡山の食事 瀬戸内沿岸・島しょの食より
いなはぼらの若いもので、一尺以下の体長である。いなのかけ飯は、冬の料理である。
いなのうろこをとり、内臓も出し、たっぷり湯をわかし、いなだけを炊く。少し冷まして、汁の中で、頭、骨、尾をはずし、身をほぐしてそのまま汁の中に入れておく。身分かれのよい魚なので、頭を持ち、はしですごけば簡単に身がはずれる。
にんじん、大根、ごぼう、ねぎなどの季節の野菜やこんにゃくをきざんで、いなのゆで汁に入れて炊き、醤油味のお汁をつくる。この汁を熱いごはんの上にかけると魚のかけ飯ができあがる。平常は麦ごはんに、お客でもあれば白いごはんにかけると、ちょっとしたごちそうにもなる。
寒い冬の晩ごはんによくつくられ、ふうふう吹きながら食べるとからだが温まる。このときのおかずは、こうこ(たくあん)だけである。
げた(したびらめ)やぐち、けっけえじゃこなどの小魚は、頭、骨ごと包丁でたたき、くずし身にして汁をつくり、かけ飯にする。
出典:鶴藤鹿忠 他. 日本の食生活全集 33巻『聞き書 岡山の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.58-58