聞き書 佐賀の食事 玄界灘沿岸の食より
吸いもの汁は一年中四季の魚を使って昼飯につくるが、ことに、冬から春にかけてとれる大羽いわしの吸いもの汁は、とびきりである。
大なべに湯をわかし、大根やじゃがいもなど季節の野菜とともに、大きいいわしは二つ切り、小さいものはそのまま入れて炊く。醤油だけで色濃く味つけするが、色の濃いわりにはからくない。とれたての魚と野菜の味が溶けあっておいしく、何杯もおかわりする。具が多く、吸いもん皿といわれる深皿にたっぷりつけて、魚は引きあげてなめもの(醤油の実)につけて食べたりする。
時化て魚がないときはいりこでつくるが、味がもの足りない感じがする。
出典:原田角郎 他. 日本の食生活全集 41巻『聞き書 佐賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.179-180