聞き書 千葉の食事 東京湾奥の食より
■船上食(漁師の昼飯)―麦飯、かつ節、こうこ、おつけ
漁はだいたい朝八時から午後四時ころまで行なうので、漁師は船の上で昼食をとる。
船に積むのは、水、おはち(飯びつ)、なべで、それぞれに独特のこしらえをする。水は八升ほど入る水樽に井戸水を詰め、小びしゃくを添える。おはちにはごはんを入れ、茶わんとわんを人数分重ねて、ごはんに埋めこむ。こうすると、揺れる船の上でも茶わんが安定する。茶わんの中には、かつ節のかいたものとたくあん、夏は、きゅうりやなすのぬか漬を丸のまま入れておく。醤油はとっくりか空きびんに詰め、味噌は経木に包んでなべの中に入れる。大きめの木綿風呂敷でおはちとなべを包み、積みこむ。
昼近くなると、持参の七輪に焚きつけとマッチで炭火をおこし、なべに水樽の水をあけて火にかける。ここにとりたての雑魚を放りこみ、用意した味噌でおつけにしたり、ときには醤油で味つけした醤油汁にする。漁場でとれた外道(釣ろうとする目的以外の魚)の雑魚や傷ものなどを実にしたおつけは、菜ものと汁を兼ねており、うっかりすると食べすぎるほどおいしい。
おはちの中から茶わんをとり出し、飯を盛り、こうこ(漬物)とともにほおばる。二人乗りの舟で、飯は一升から一升五合くらい持ってゆく。
写真:漁師の船上食(昼食)
おはち(左)の中:麦飯、なすときゅうりのぬか漬/枕箱(右):上の引出しにはきせる、下には釣り針などを入れる。
出典:高橋在久 他. 日本の食生活全集 12巻『聞き書 千葉の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.151-153