聞き書 東京の食事 大森海岸の食より
二月十一日の稲荷講がくれば、のりとりの最盛期は終わり楽になるが、のりの盛りがすぎたのだと思うとさびしい。
三月から四月に入ると、潮干狩りでにぎわい、あさりもおおっぴらにとれる。
三月下旬から、のり干し場に枝豆、いんげん、とうもろこしなどの野菜を播きつけ、じゃがいもの種いもを植えつける。
たくあん漬が終わり、大根、きゅうり、なす、かぶなどが漬けられるように手入れをする。
一年ののり漁業は、五月に入っての「ひび抜き」で終わる。
■晩飯―麦飯、あさりのほーかし、魚の煮つけ、漬物
あさりのほーかしは、おわんに盛り上がるようにあさりが入った味噌汁である。あさりを食べるようにたくさん入れ、醤油味の汁にした「やきあさり」、あさりをむき身にして使い、おから、あさり、長ねぎ、わかめを入れたぬたなど、あさりの料理がふえる。
春には魚も種類が多くなり、魚の煮つけもたびたびおかずになる。
写真:春の晩飯
上:〔左から〕かれいの煮つけ、たくあん/下:麦飯、あさりのほーかし
出典:渡辺善次郎 他. 日本の食生活全集 13巻『聞き書 東京の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.136-138