晩はあさりのほーかし、おやつは玄米パン―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2021年03月25日

聞き書 東京の食事 大森海岸の食より

二月十一日の稲荷講がくれば、のりとりの最盛期は終わり楽になるが、のりの盛りがすぎたのだと思うとさびしい。
三月から四月に入ると、潮干狩りでにぎわい、あさりもおおっぴらにとれる。
三月下旬から、のり干し場に枝豆、いんげん、とうもろこしなどの野菜を播きつけ、じゃがいもの種いもを植えつける。
たくあん漬が終わり、大根、きゅうり、なす、かぶなどが漬けられるように手入れをする。
一年ののり漁業は、五月に入っての「ひび抜き」で終わる。

■晩飯―麦飯、あさりのほーかし、魚の煮つけ、漬物
あさりのほーかしは、おわんに盛り上がるようにあさりが入った味噌汁である。あさりを食べるようにたくさん入れ、醤油味の汁にした「やきあさり」、あさりをむき身にして使い、おから、あさり、長ねぎ、わかめを入れたぬたなど、あさりの料理がふえる。
春には魚も種類が多くなり、魚の煮つけもたびたびおかずになる。

写真:春の晩飯
上:〔左から〕かれいの煮つけ、たくあん/下:麦飯、あさりのほーかし

 

出典:渡辺善次郎 他. 日本の食生活全集 13巻『聞き書 東京の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.136-138

関連書籍詳細

日本の食生活全集13『聞き書 東京の食事』

渡辺善次郎 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540870989
発行日:1988/02
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

昭和初期、巨大都市・東京人は何を食べ、どう暮らしていたか。下町と山の手、都市部と農村部に目配りしつつ、深川・本所・日本橋から世田谷・葛飾・大森・奥多摩・伊豆大島などでの四季折々の食事の世界を再現する。
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