聞き書 秋田の食事 県央男鹿の食より
七月十四日は、産土神の北浦神社の祭礼で、この日、鹿島流しをし、海路の安全を祈る。鹿島流しは、まず隣り近所一〇戸ぐらいずつで班を組み、一尺ぐらいの高さのわら人形(鹿島)を一体つくり、紙でつくった烏帽子や狩衣を着せ、家内安全、商売繁盛などの願いをこめて神社に奉納する。全部の鹿島がそろったところで祈とうをしてもらい、むしろでつくった舟に板を敷いて並べ、海に流す。そのとき鹿島の流れた方向へ、はたはた漁の網建てをする習慣がある。
お盆には仏壇に、よしで編んだ三尺に六尺のたたみ大のすだれを敷いた盆棚をつくり、その上にお膳を上げ、お飾りをする。お膳に上げるお盆の供えものは、ところてん、くろもときゅうりの酢のもの、かぼちゃの煮たもの、油揚げ、こんにゃく、にんじんの煮つけ、そうめんなどで、十三日の夜から十六日の朝まで、毎食、献立をかえてお供えし、家族も同様のものを食べる。このすだれは翌年、魚や山菜などを干すときに使う。
写真:お盆のお膳
本膳(左):〔上〕煮しめ、口取り、〔中〕中盛り、えごの刺身とくろもの酢味噌、〔下〕おひたし、すまし/二の膳(右):〔上〕てんぷら、口取り、〔中〕煮豆、〔下〕そうめん、大根のごまあえ
出典:藤田秀司 他. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.29-30