盆には、精霊だごともろこ魚をお供えして―晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2021年07月13日

聞き書 宮崎の食事 日南の食より

盆の入りから送り盆まで
七月十三日を盆の入りという。この日は夕方、お墓に精霊さまを迎えに行き、途中が明るいようにと迎え火を焚く。
十三日のお供えは、朝、お茶と白せい粉(らくがん)。この日、精霊ござを仏壇の前に敷き、時の恵みの果物や、その日のお供えを飾る。日によってお供えするものが変わる。
十三日の夕方は、「わさこ(新米)の飯に小菜の味噌おつけ」と伝えられている。小菜は、葉を出したばかりの青菜のことで、わざわざ盆の味噌おつけ用に植えておく。これに、海草のむかでのり(とげきりんさい)を煮溶かして固めたものの味噌漬をつける。
十四日は、朝、白ごはん、小菜の味噌おつけ、もろこ魚、煮つけ、かけそうめん、かつおの生節、むかでのりの味噌漬を供える。もろこ魚は、あじの塩干しもんで、両親のいない人は食べない。片親の人は一ぴき、両親そろっている人は二ひき食べる。夕方は、精霊だごと煮つけ。精霊だごは、米粉を小さく丸めてゆがいたものに、こしあんをまぶす。
十五日は、精霊さまも朝ゆっくりで、朝のお供えはしない。昼前に、小豆ん飯、ごんぼとからいものかき揚げを供える。夕方は、冷やしそうめんとなすびの白あえ。
夜、精霊さまが帰られるときのおみやげとして、みやげだごをつくる。二銭玉くらい(直径六分六厘ほど)の米粉だごを丸めて熱湯の中でゆがき、白い粉(かたくり粉)をつける。また、はしの太さくらいの二寸の長さのてんびん棒に形づくっただごもゆがいて粉をつけ、ご先祖さまの数ほどつくってみやげにつける。丸だごの数は偶数とする。
十五日の夜は、精霊ござに、盆のお飾り、お供え、花、みやげだごを包んで、真麻蘭の葉で三か所しばる。「みやげが多いして、こりゃ、うんてえー(重たい)なー」などと、家族で精霊さまとお別れの話をしながら包み、海に流しに行く。
十六日は餓鬼童(鬼)が、みやげ食べかた(せっせと食べること)で忙しく、地獄の釜のふたが開くといい、男は船を出さず、女はすし飯をつくり、家族で一日中ゆっくりくつろぐ。夜は家の前で送り火を焚く。
盆すぎころから、夏の海は荒れ気味で、「盆すぎたら、もう潮浴べ(海水浴)には行くもんじゃねえー」といわれる。

写真:盆のごちそう
左の膳:もろこ魚(あじの干しもん)、煮つけ(つわ、たけのこ、豆腐あぶらげ、切りこんぶ、ふろ豆)とかまぼことごんぼのかき揚げ、かけそうめん、かつおの生節/右の盆:〔上左から時計回りに〕小菜の味噌おつけ、白ごはん、精霊だご、煮つけ、むかでのりの味噌漬

 

出典:田中熊雄 他. 日本の食生活全集 45巻『聞き書 宮崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.287-289

関連書籍詳細

日本の食生活全集45『聞き書 宮崎の食事』

田中熊雄 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540901010
発行日:1991/3
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

伝説に彩られた山深き里、古来「日向の国」と呼ばれた太陽の国・宮崎。焼き畑の村に、陽光そそぐ平野に、霧島のぞむシラスの台地に、黒磯洗う浜に、なつかしい食と暮らしをたずねた南国の食の記録。
田舎の本屋で購入

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