柿の葉ずし

連載日本の食生活全集

2021年10月26日

聞き書 福岡の食事 筑前中山間の食より


秋の日ざしに色づいた柿の葉がひときわ美しく映えるころ、豊作を氏神さまに感謝し、村中で祝うおくんちが行なわれる。このときのおごっそうとして、柿の葉ずしが必ずつくられる。
まず、いろどりの美しい柿の葉を洗ってふいておく。すし飯は米と水を同量で炊く。合わせ酢は米一升に酢一合強、砂糖を茶わん一杯、塩を軽く一にぎり合わせる。具には、にんじん、しいたけ、ごんぼう、鶏などを使う。これらを小さくそぎ切りにして、砂糖と塩で味つけして煮る。すし飯の中に具を混ぜて小さくにぎり、その上にまびき(しいら)の酢じめや、川からすくってきたえびんちょ(小さなえび)、買ってきた赤や青のでんぶなどをいろどりよくおき、柿の葉でくるむ。上に錦糸卵などを飾った柿の葉ずしをつくることもある。柿の葉ずしは豆腐枠や醤油舟に詰めて、一晩押しをかける。
皿に盛られた青や赤、黄ばんだ色の柿の葉ずしからは、秋の味と香りが伝わってくる。すしと酢じめの魚を柿の葉にくるんでいるから腐りにくく、日もちがよい。
おくんちまいりのお客人には、もちと柿の葉ずしを竹の皮に包んでみやげにことづける。

 

出典:中村正夫 他. 日本の食生活全集 40巻『聞き書 熊本の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.87-87

関連書籍詳細

日本の食生活全集40『聞き書 福岡の食事』

中村正夫 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540860775
発行日:1987/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

玄界灘・有明海・周防灘の三つの海と、筑後川・遠賀川などの豊かな水にうるおう古代国家発祥の地・福岡の食は、ロマンと豊饒、篤き信仰心と伝統に育まれている。
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