聞き書 滋賀の食事 湖北余呉の食より
山の神さまをまつる山講は、春、秋の二回行なわれる。春は二月九日、秋は十一月九日である。春の山講は、山の雪も消えはじめ、いよいよこれから山の仕事にとりかかるということで、山仕事の安全を祈る行事である。秋の山講は、みぞれまじりの雪が降り出すころで、一年の山仕事を終えて山の神に感謝する日である。
上丹生では組ごとに集まる。宿の家へは米二合ずつを持ち寄り、神棚には、鏡もち、神酒、山の幸、海の幸の供物を供えて祈とうする。このあと神酒をくみかわし、すき焼きで会食をする。すき焼きには、家で飼っている鶏をつぶしてだし肉に使う。七輪にすき焼きなべをかけ、肉、ごぼう、ねぎ、豆腐、麩を入れて、砂糖、醤油で味つけして食べる。
写真:山講のかしわのすき焼き
かしわ、ごぼう、ねぎ、豆腐、棒麸が入る。
出典:橋本鉄男 他編. 日本の食生活全集 25巻『聞き書 滋賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.227-227