秋祭りに趣を添える柿の葉ずし―晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2021年11月09日

聞き書 大阪の食事 南河内山村の食より

秋祭り
旧暦十月九、十、十一日の三日間行なわれる。九日は宵宮、十日は本祭り、十一日はごえんと呼ばれる。宵宮の日に、くるみもち(大豆あんでくるんだもち)、柿の葉ずしをつくり、客をもてなす。
山主からその冬の炭焼きの権利を買う者は、山主のところに「山て」を払いに行き、柿の葉ずしの接待を受ける。
十日の夜、村の若衆が堂村の地蔵堂の蔵に保存されている村の大太鼓と高張りちょうちんを持って祇園囃子を唱えながら、天神社に灯をあげる。関屋家の主人は、この祇園囃子が得意である。
神に灯をあげるのは清めることを意味し、灯をあげたあと、直会の儀が行なわれ、村人たちは相嘗する。これは神さまと人々がともに食事をして神人一体となることで、それぞれの家の畑でとれたての野菜を炊いて一重ずつ持ち寄り、神とともに食事をして、その年の五穀豊穰を感謝し、家内安全、無病息災、地元の無事安泰すべてを祈る。
十一日は村人の休日で、奉公に出ている娘たちも帰ってきて、村の小学校で運動会が開かれる。子どもから年寄りまで村人全員がお弁当を持って集まり、一日中楽しむ。
重ね重のお弁当の中身は、高野豆腐、かんぴょう、紅しょうがの入った巻きずしとごまをふった俵形おにぎり、かまぼこや高野豆腐の炊き菜である。栗や柿、なつめも持っていく。当日はどこからか甘蔗(さとうきび)を売りにくる。

写真:秋祭りのごちそう、柿の葉ずし

 

出典:上島幸子 他編. 日本の食生活全集 27巻『聞き書 大阪の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.230-231

関連書籍詳細

日本の食生活全集27『聞き書 大阪の食事』

上島幸子 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540900099
発行日:1991/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 392頁

商人の町・大阪は、日本中の一流の物産が集まる「天下の台所」。船場、天満の商家、月給取り、近在の農家・漁家の食卓に、「食い倒れ」の真相を探る。写真を添えて料理を再現した食の歳時記。
田舎の本屋で購入

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