聞き書 大阪の食事 河内(旧大和川流域)の食より
■秋祭り(卯辰祭り)
今年の五穀豊穣を祝う恩智神社の神事である。十一月下旬の卯と辰の日に行なわれるので、卯辰祭りともいわれる。
神社の御供田から収穫した米で、村の人たちが集まって神さまのお供えもの「人形」をつくる。うるち米四斗ともち米五升を力を合わせて精白し、粉にし、一握りずつのだんごをつくる。中心になるだんごには大豆を包み、これらを油で揚げ、人の形に組み合わせる。恩智神社はもともと食の神さまであり、この秋祭りは、五穀豊穣を神とともに祝う神事である。
一方、各家庭では、神社近くで開く魚市で赤えいやかまぼこを買い求め、赤えいの煮つけ、えいのきもをだしにしたえいのおから、かまぼこ、あえもち、ふなとこんぶの甘煮などのごちそうをつくり、豊作を祝う。「人形」は各家にも配られ、焼いたりおつけに入れたりして食べる。
写真:恩智神社の秋祭りに供える「人形(ひとがた)」
出典:上島幸子 他編. 日本の食生活全集 27巻『聞き書 大阪の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.162-162