聞き書 群馬の食事 高崎近郊の食より
■夕―麦ごはん、すいとん、切干し大根の煮もの、たくあん
農繁期に備えて、機械で縄をなったり、米俵を編んだりするのも冬の仕事である。
あまりからだを動かさない作業は、夕方になると寒さがひとしお身にしみて、夕食には何か温かい料理がほしくなる。そこで冬の間は、すいとんや、汁に生うどんを入れて煮るおっきりこみがときおり登場する。
すいとんは秋に貯蔵しておいた馬鈴薯、大根、にんじん、ごぼう、里芋、白菜、ねぎなどの野菜をなんでも入れて醤油味の汁をつくり、やわらかめにこねた小麦粉をさじですくって入れる。二月の寒さはとくに厳しく、身が切れるように冷えるため、すいとんやおっきりこみを食べると身も心も温まる。
平坦地であり、気候も一定しているこの地域は、春から秋までは農作業や養蚕で忙しく、料理に手をかけていられないが、冬の農閑期は家族に手のこんだものを食べさせてやれるよい機会で、野菜の煮しめや煮豆などもよくつくる。
写真:冬の夕食
麦ごはん、すいとん、切干し大根の煮もの(油揚げ、にんじん入り)、味噌漬(なす、大根)
出典:志田俊子 他編. 日本の食生活全集 10巻『聞き書 群馬の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.119-120