聞き書 宮城の食事 阿武隈丘陵の食より
■正月準備
お正月は、神さまとともにおいしいものを食べてゆっくりする。そのため十二月に入ると準備にかかる。もち搗き用にもち米を搗いて精白したり、どんこ(えぞいそあいなめ)を炉で焼干しにしたり、納豆つとのわらすぐりなどに忙しい。納豆つくりは、十二月二十五日にするものとされ、大豆五升くらいをねせ、お正月を中心に冬中食べる。
二十八日はもち搗きをする。もちは三斗も四斗も搗く。神さまに供えるおふくでやいなぼ(小さく丸めたもちをしらはぎの枝にさし、稲穂に見立てたもの)をつくり、残りは全部のしもちにする。のしもちは、一日おいて幅四寸くらいに断ち、それを三分くらいの厚さに切っておく。
正月用の買物は、駒場家では舅の役目で、福島県の相馬まで買いに行く。
材料の用意がされると、ごちそうつくりにとりかかる。これは、女たちの仕事である。はたいも、凍み豆腐、にんじん、ごぼう、こんにゃくの入った煮しめ、焼干しのどんこの煮つけ、焼きがれいを煮たもの、塩びき(塩鮭)の焼きもの、ごぼう炒り、柿なます、するめとにんじんの醤油漬、ささぎ豆の煮豆など、お正月さまにお供えする料理をつくる。これらは、かめっこ(小さいかめ)や大きいどんぶりに入れ、つくりおきし、お正月には忙しい思いをしないように気を配る。
写真:お正月の朝食
膳内:〔左上から〕煮しめとどんこの煮つけ、焼がれいの煮つけ。〔中〕するめとにんじんの醤油漬、柿なます、ごぼう炒り。〔下〕白飯、酒、ささぎ豆の煮豆、澄まし汁(豆腐、ねぎ)/膳外:納豆、酒
出典:竹内利美 他編. 日本の食生活全集 4巻『聞き書 宮城の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.265-268