性学もち

連載日本の食生活全集

2021年12月20日

聞き書 千葉の食事 今に生きる大原幽学「食の教え」より


性学もちは、大原幽学がそのつくりかたを考案し、農民に伝えたといわれるもので、別名「搗き貫もち」ともいわれる。
このもちの特色は、うるち米を粉にしないで搗くということで、一週間から一〇日間ぐらいはやわらかく、夏でも保存がきく。
うるち米を二日間ほど水に浸し、芯がなくなる直前まで蒸す。せいろの下段にしゃもじを入れて、粒々を感じるうちはまだ早い。
蒸しあがったら、水洗いしてあくを抜く。米の粒が一粒一粒ばらばらになるまでよく洗い、それがすんだら、よく水を切って再び蒸す。蒸しあがったら、はじめは手早く、上から力を入れてねじこむように搗く。
あく抜きを十分にするので、あっさりしてなめらかなもちができる。幽学はのどにつかえる心配がないといって、年寄りや七歳までの子どもに食べるようにすすめた。
正月の雑煮にするほか、汁に入れたり、くずあんをかけたりして食べる。

写真:性学もち
搗いて丸い棒状にまとめたもち(右)と、それを薄く切って入れた雑煮。

 

出典:高橋在久 他編. 日本の食生活全集 12巻『聞き書 千葉の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.281-281

関連書籍詳細

日本の食生活全集12『聞き書 千葉の食事』

高橋在久 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540890024
発行日:1989/6
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

黒潮が打ち寄せる房総半島は日本でも屈指の好漁場。いわし・かつおに代表される海の幸と利根川の魚、台地の作物が食膳にのぼる。太巻ずしはこの地の伝統食。女性が築いた食の営みを記録する。
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