聞き書 岐阜の食事 南濃輪中の食より
■正月
家の中の仕事からも野良仕事からもすべて解放され、朝には家族全員がそろってごちそうを囲み、新年を祝う。
雑煮は、角もちと正月菜(こまつな)を醤油汁で煮こみ、上からけずり節をかけたものである。よそではいろいろな具を入れるとも聞き、それに比べれば質素きわまりないが、もちはなによりのごちそうである。ふなのあらめ巻きはこぶ巻きがわりで、このあたりでは正月に欠かせない料理の一つである。重箱には里芋、れんこん、こんにゃくなどの煮しめ、黒豆などが色を添え、大皿にはふなの尾頭つき(姿煮)が盛られる。
写真:正月のごちそう
ふなのあらめ巻き、ふなの姿煮、雑煮、里芋とれんこんの煮もの。重箱の中は田作り、数の子、黒豆、こんにゃく
出典:森基子 他編. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.271-273