聞き書 徳島の食事 阿南海岸(阿部)の食より
■正月
海部郡阿部村では、正月(旧暦)は身内の祝いだからと好きなようにするのが風習である。鏡もちの大きさも各家によってまちまち。二段または三段重ねを三方にのせ、上には必ず飾りえび(伊勢えびのゆでたもの)がその引き立て役として、あるいは祝いものとして置かれる。
浜行家の雑煮は白味噌仕立て。いりこだしに、自家製の白味噌で味をつけ、白もち、大根、里芋、にんじんを入れる。おせち料理は、重詰に、ごぼうやこんにゃく、里芋、高野豆腐、にんじん、こんぶなどの煮つけを詰める。家族が七人いるのでどっさりとつくる。まだいの塩焼きや、はまちの煮つけなどもつくる。正月の膳には赤飯、あじの姿ずしもついて豪華で、料理を前に、家族そろって元旦の祝い酒で年を迎える。
写真:正月のごちそうとお供え
煮しめ、赤飯、まだいの塩焼き、はまちの煮つけ、雑煮、酒。伊勢えびと鏡もち
出典:立石一 他編. 日本の食生活全集 36巻『聞き書 徳島の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.175-176