聞き書 福岡の食事 筑後川流域の食より
■正月
元旦は、家長が早朝に、お神酒とおひかり(灯明)を神仏や米蔵の中に供える。その後、若水をくむ。家の者はみなその若水で顔を洗い、新しくおろした一本の若水手ぬぐいで顔をふく。
元日の朝は屠蘇、なます、数の子、黒豆、がめ煮、雑煮である。雑煮はこんぶ、するめ、にんじん、ごぼう、れんこん、かつお菜にいりこを入れた汁を醤油味にし、ゆでたもちを入れる。
元日は、福の神を逃がさないために、雨戸も開けず掃除もしない。出入り口も閉めて一日をすごし、風呂もわかさない。
一月二日は、二日おこしといって、家内中がとくに朝早く起き、男はわら仕事、女は機織り、掃除、針仕事、あられ切りなどをする。子どもは書初めをし、朝のうちに風呂を焚いて入り、午後は休む。
朝飯に福入りぞうすいを食べる。大みそかの運そばの残り汁に、冷や飯や元日の雑煮の残りなどなんでも入れてつくる。家によっては、もちやふきのとうを入れるところもある。
写真:がめ煮
お祝いごとや諸行事には、どんなごちそうがあってもがめ煮は欠かせない。材料は季節や祝儀、不祝儀で違うが、正月には、鶏肉、ごぼう、にんじん、いも、れんこん、こんにゃくなどを入れる。
出典:中村正夫 他編. 日本の食生活全集 40巻『聞き書 福岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.155-159