聞き書 佐賀の食事 玄界灘沿岸の食より
■昼飯―麦飯、いりやき、いわしの刺身、大根漬
ごはんを炊くのは昼だけで、麦だけのごはんである。昭和になり、呼子町の精米所でしゃぎ麦(押し麦)ができるようになったので、麦搗きもしなくていいようになり、炊くのも楽になった。ぱさつくのを防ぐため、炊きあがってから五分ほどしゃもじで混ぜる。
この時期は名護屋浜の捕鯨船で毎日ミンクくじら(いわしくじら)がとれるので、皮くじら(背側の脂身)を使ったすき焼き風のいりやきをどこの家でもつくる。脂がのった大羽いわしは、まず刺身で食べる。山や畑は遠くとも一五分くらいのところにあるので、温かい昼飯をとりに帰ってくる。
写真:冬の昼飯
上:大根漬、いわしの刺身/下:麦だけの麦飯、いりやき(くじら、大根、ごぼう、ねぎ)
出典:原田角郎 他編. 日本の食生活全集 41巻『聞き書 佐賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.152-154