聞き書 山形の食事 県北最上の食より
わらびたたきの音が、隣りの家からも、その隣りの家からも、とんとん、とんとんと聞こえてくると、最上地方にもすっかり春が訪れ、農作業が忙しい季節になる。
わらびは、まずあくを抜く。わらびを銅なべに並べ、木灰を一面にふり、熱湯を上からかぶるくらい注ぎ、おとしぶたをして軽く重石を置き、一晩おく。次の日、水洗いして、早く食べたいときは、熱湯をくぐらして水にさらす。すぐ食べないときは、わらでゆわえて、流れ水につけておくと自然にあくが抜ける。
あく抜きしたわらびの水気をよく切って、まないたの上で、すりこぎでたたきながら、つぶす。さらに包丁で切り、とろみが出るまでたたき続ける。へらに味噌をつけて焦げめをつけ、すり鉢でよくすり、さんしょの葉を入れて香りをつけ、たたいたわらびと一緒に合わせる。
写真:わらびたたき
春の訪れとともにつくる。
出典:木村正太郎 他編. 日本の食生活全集 6巻『聞き書 山形の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.132-132