あざみ、こごみ、くきだちが運ぶ春の息吹き―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年04月13日

聞き書 青森の食事 津軽半島東部の食より

春、田んぼの雪も消え、農作業がはじまるころから、米に麦を混ぜた麦飯になる。毎日の労働がきびしくなるからである。
男たちは、こうなご(小女子)やいわし漁で、海に出かける。
ひらごいわし(まいわし)は、夜から朝にかけて水揚げする。陸にいわしが水揚げされると、女たちは夜から朝にかけて、さしわたし四尺以上もある大釜で煮てから、「どう」に入れて、「きりん」でしぼる。汁の上に浮かんでいる脂は缶にとり、しめ粕は一個一〇貫くらいの固まりにして、田に入れる分だけを残して田どころの肥料に売る。脂も売る。しめ粕は畑には使わせない。残った汁だけを、かじぎざおでかじいで(かついで)畑の肥料にする。この作業が女たちの仕事である。魚のしまつを終える合い間に、田打ちや畑の播きものにも忙しく、眠っている間がないほどの春のはじまりである。
春にとれるいわしは生魚としてはあまり食べず、大羽のいわしを選んで、塩ぬか漬にする。これから一年間、魚がとれない時期に食べられるよう、塩をきつくして漬けておく。
昼―いもけえ、いわしの塩焼き、うどのあぶらあえ、たくあん漬
春のおかずは、秋に貯蔵したきのこや、漬物をきだして(塩出しして)だし汁でやわらかく煮た、こじょなかせ(小僧泣かせ)などである。塩がきつく、何回も水をふたてで(とりかえて)煮なければならないから手間がかかるので、飯炊きの小僧はこれをつくるのに大変で泣いたところから、こう呼ばれている。
これに加えて、春に芽ぶいた山菜のあざみやこごみ、うどなどが、毎日のようにお膳にのるので、山菜の新鮮であくのある独特の味のよさが、よけいに感じられる季節でもある。
昼ごはんは、いもけえやいもの塩煮で、いもを腹いっぱい食べた後に麦飯を少し食べる。五月、六月は大羽いわしの漁があるので、とりたてのいわしの塩焼きを、皿に盛り上げて食べる。

写真:春の昼食
上:いわしの塩焼き、たくあん漬/下:いもけえ、うどのあぶらあえ

 

出典:森山泰太郎 他編. 日本の食生活全集 2巻『聞き書 青森の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.98-100

関連書籍詳細

日本の食生活全集2『聞き書 青森の食事』

森山泰太郎 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540860324
発行日:1986/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

二つの藩の伝統を受けつぐ青森県は、二つの半島、三つの海、三つの山脈を頂く。特色ある六つの地域で海の幸・山の幸の四季おりおりのくらしと料理法をちみつに聞き書き。
田舎の本屋で購入

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