聞き書 愛媛の食事 肱川流域(大洲)の食より
高菜は大菜、春ぼこりと呼ぶようにぶ厚い菜で、漬物や煮ものに適し、たけのこや山菜とともに端境期をつないでくれる。たけのこは大羽釜にぬかを入れてゆでておき、山の落ち水にさらしておくと、しばらくは間に合って便利である。
■晩―炊きごみごはん、けんちゃん汁、たけのこの煮しめ、こうこ
炊きごみごはんは、米を少なくして具を多くする。具にはたけのこ、にんじん、大根、里芋、松山揚げなどを入れる。松山揚げというのは縦六寸、横四、五寸の薄い干し揚げで、松山の特産品である。だしは干しあい。
あく抜きしたたけのこは、多めのいりこだしに砂糖や醤油で味つけし、中火で時間をかけて煮ふくめると、かむごとに煮汁が出ておいしい。夜や雨の日などに大なべいっぱい炊いておき、余った分は煮返して食べる。
写真:春の夕食
膳内:炊きごみごはん、たけのこの煮しめ、けんちゃん汁/右の皿:こうこ
出典:森正史 他編. 日本の食生活全集 38巻『聞き書 愛媛の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.81-82