聞き書 青森の食事 南部〈上北〉の食より
春の行事は、二月から三月にかけて日を決めて行なう火まつりにはじまる。この日には神明宮から幣束をもらい、各家庭に回す。回り番こで集まり、酒盛りをする。
三月十六日は、一年中の作を守ってくれるお農神さまの日である。お農神さまは朝早く家に入るというので、まだ暗い三時ごろに起きて米の粉を手きぎ(手杵)ではたく作業をする。盆におしとぎ八つ、切りもち八つをのせ、神棚のえびす・大黒さまの前に供えて拝む。
その後、同様に六戸の今熊神社に参詣する。そこで祈祷した笹をもらい、それを持ち帰り、水苗代や何か所かに分かれている田畑にさす。
春彼岸には、入り日にそばだんごかよもぎだんごをつくり、また、まえだま、割ったくるみなどを仏さまに供える。中日にはもちを搗く。送り彼岸にはころばしだんごを供える。仏さまがこれをころばしながら帰っていくという。
写真:春彼岸のお供え
〔上から〕よもぎだんご、ころばしだんご、くるみ、まえだま
出典:森山泰太郎 他編. 日本の食生活全集 2巻『聞き書 青森の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.218-220