聞き書 滋賀の食事 近江商人(本宅)の食より
ふきのとうが地面から顔を出すと春の訪れである。そのふきのとうを使ったふきのとう味噌が食卓にのぼると、今年ももう春が来たのかと食卓の春を感じる。
ふきのとう味噌には、花が開く前のつぼみのころが、ふきのとうのほろ苦みが強くてよいとされている。ふきのとう三合をよく洗って熱湯でゆがき、半日ほど水につけ、途中二、三度水をかえて十分あく抜きをする。水気を切ったあと細かくきざみ、味噌一〇〇匁と一緒にすり鉢でよくする。そのなかに砂糖を大きなさじで五、六杯と水あめ一〇〇匁を入れ、十分混ぜる。このようにしてつくった味噌はなめ味噌として食べる。
写真:ふきのとう味噌をつくる
出典:橋本鉄男 他編. 日本の食生活全集 25巻『聞き書 滋賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.147-148