聞き書 愛媛の食事 高縄山塊(鈍川)の食より
春の息吹きとともに、頭を持ち上げてくるつくし。ほんとうに愛らしく、子どもから大人まで野に出てつくし摘みを楽しむ。
摘んだつくしは、まずはかまをていねいに除き、あくを除くために、さっと湯を通す。いりこ(煮干し)のだしとともに煮こんで、溶き卵をさっとちらすと、見た目にも美しくて食欲が増す。味つけは砂糖と醤油。
日常卵を使うことはめったにないが、春の香りを味わうために奮発してつくるのが、このつくし料理である。
出典:森正史 他編. 日本の食生活全集 38巻『聞き書 愛媛の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.283-283