聞き書 岡山の食事 中国山地の食より
春、秋の彼岸には必ずつくる。ぼたもちとおはぎは同じ意味で使われていることが多いが、春の彼岸に塩あんをまぶしたぼたもちをつくり、秋にはきな粉をまぶしたおはぎをつくる集落もある。
もち米とうるち米を七対三の割合で用意し、洗って水加減して炊く。このとき、少量の塩を入れるとおいしい。炊きあがったら蒸らして、釜の中ですりこぎを用いて半搗きにする。直径二寸くらいに丸めて、まわりに塩あんやきな粉をまぶす。
あんは、小豆を一晩水にかし、やわらかくなるまで煮て、塩を入れた粒あんである。また、きな粉は、前日までに大豆を炒って石臼でひき、塩を入れて味をつけたものである。きな粉は、大豆で二升くらいを一度につくる。まず、三升なべ(鉄なべ)で大豆三合を焦がさないように炒る(約七、八分)。焦がすと苦みがでるからである。炒り加減は、大豆の皮が半分に割れるのが目安である。炒れたら石臼でひく。大豆二升を粉にひくのに約一時間はかかる。大豆のくずは、水がしして牛の餌にする。
たいてい、どの家でもそのまま食べるが、手塩皿に白砂糖を入れ、少しかけて食べることもある。砂糖は貴重品なので、このような食べ方は、ちょっとしたぜいたくである。
写真:ぼたもちとおはぎ
きな粉をまぶしたおはぎ(上)と、塩あんをまぶしたぼたもち。ぼたもちは砂糖(左)をつけて食べる。
出典:鶴藤鹿忠 他編. 日本の食生活全集 33巻『聞き書 岡山の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.271-272