ごちそうつくりに忙しい田植え、小麦ぶち―晴食・行事食

連載日本の食生活全集

2022年05月10日

聞き書 茨城の食事 県央畑作地帯の食より


田植え。畑作地帯でも、田植えは重要な行事の一つである。主婦は田植えの日のまかないのため、前の日から手伝いの人々の食事の準備に大わらわになる。近所の雑貨屋で身欠きにしん、かんぴょうなどを買いこみ、豆腐屋にいってがんもどきや豆腐も買う。
田植えの日の朝、主婦は暗いうちに起きて朝食の準備をし、それから手伝いの人々の昼食やこじゅはんの準備にかかる。前夜ひやしたもち米は赤飯にふかし、おにぎりにする。身欠きにしんや、かつおの煮つけを必ずつくる。
四食分(一〇時、二時、四時、夕飯)のおかずにするのに、たくさん煮ものを煮る。小女子と真竹の煮つけ、かんぴょう、こんにゃく、油揚げ、がんもどきも煮つけるし、かきするめ(するめいかを切りこぶのようにきざんだもの)も炒る。
夕食には白米飯を炊く。ぼたもちをつくることもある。手伝いの男衆には酒をふるまう。さかなに、かつおの刺身を出す。

写真:田植えの食事
上:じゃがいも、ふき、切干し大根の煮つけ/重箱の中:ながいも、身欠きにしん、にんじん、大根、ごぼうの煮つけ/右:きんぴら(ごぼう、にんじん)

 

出典:桜井武雄 他編. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.24-27

関連書籍詳細

日本の食生活全集8『聞き書 茨城の食事』

桜井武雄 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540850387
発行日:1985/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 348頁

「新豆できたから納豆寝せべ」穀類豊富な県央畑作地帯、水郷ならではの淡水魚を利用した南部水田地帯。水陸の幸を素材に食事づくりを手がけてきた主婦からの聞書きによってまとめた「常世の国」茨城の食事。
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