聞き書 石川の食事 金沢商家の食より
かぶは十一、十二月に出回る。熱いあんかけにして食べると、からだが温まる。皮をむいて丸のまま使うが、早く煮えるように裏に十文字に切り目を入れる。なべにこんぶを敷いて水、酒、色づくていどの醤油を加え、形をくずさないように弱火でやわらかくなるまで煮る。火からおろしてしばらくそのままおく。
その間にあんの材料を用意する。宝達でとれる宝達くずを水で溶き、その中に、醤油と塩一つまみを入れる。かぶが味をよく含んだら、かぶのなべを再び火にかけて、玉杓子にあんの材料を移して回しながら入れ、とろみをつける。ゆずかおろししょうがを上にのせる。
出典:守田良子 他編. 日本の食生活全集 17巻『聞き書 石川の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.38-38