聞き書 栃木の食事 両毛山地(葛生)の食より
正月の晴れ食の代表的なものである。とくに年始の客が来たとき、手間をかけずにすぐ出せるよう、暮れのうちにつくって水に浸して冷やしておく。客が来るとすぐに汁をつくり、みみうどんをとり出し、汁の中でさっと煮るだけでできあがる。
つくり方は、うどんを打つのと同じように、小麦粉に塩を少々加えて水でこね、ねかせておく。それをめん棒でのして幅一寸三分、長さ二寸ほどの長方形に切る。これを耳のような形につくり、ゆでる。ゆであがったものは、水に浸しておくと、二十日正月のころまで保存できる。
食べるときは、煮干しでだしをとり、長さ一寸より長めに細く切ったにんじん、ぶつぶつと小さく輪切りにしたねぎを入れた、醤油味の汁で軽く煮る。客に出すときは、これに卵を落とす。薬味に、ねぎとゆずを入れる。
写真:みみうどんのつくり方
うどん玉をのして長方形に切る。耳のような形に丸めてくっつける。
出典:君塚正義 他編. 日本の食生活全集 9巻『聞き書 栃木の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.306-307