聞き書 兵庫の食事 播磨山地の食より
■正月
朝、当主が暗いうちから起き出し、年末に新調してしめ飾りをしておいた杓をおろし、井戸や近くの小川から若水をくむ。水は一二杓(閏年は一三杓)たご(手桶)にくみ入れて持ち帰り、雑煮やいっさいの炊事を当主がする。雑煮を炊く火は、年越しからのいろりの火を黒豆の豆殻につける。
雑煮は、元日は澄まし汁仕立てで、するめ、はまぐり、皮くじら(くじらの皮つきの脂身)、ごぼう、白板(かまぼこ)、大根、にんじん、ねぶか(ねぎ)が入り、もちは別のなべでゆでて入れる。二日は焼いたもちを入れた焼き雑煮、三日はぜんざいにする。おかずは年末から準備している白板、ずいきいも(里芋)の子いも、こんにゃく、ふき、かんぴょうの煮しめや数の子を大鉢に盛って食べる。神さんには灯明とともに、朝は雑煮、夜はごはんを供える。
写真:正月三が日の雑煮
元日は澄まし汁仕立て(左下)、2日は焼き雑煮(右)、3日はぜんざい(左上)。
出典:和田邦平 他編. 日本の食生活全集 28巻『聞き書 兵庫の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.156-160