聞き書 茨城の食事 鹿島灘沿岸の食より
■夜――おばあさんの温かい味が待つ
足もとがかすかに見えるころ、山仕事をやめて家路につく。家につくと、男は切りわらをして、牛にかいば(餌)をやる。
夕食はおばあさんがつくってくれている。ごはんを炊き、味噌汁をつくり、こうこを出し、変わったおかずを一品必ずつくって待っていてくれる。それが楽しみである。
その一品は、里芋のような野菜の煮つけが多いが、ときには、おつけのかわりにのっぺい汁だったりして、みんなを喜ばせる。
夕食後に家族全部の食器を洗い、一人分ずつ膳に伏せて、膳棚にのせる。
写真:冬の夕食
上:煮魚(さんま)、きんぴらごぼう/中:いわしの塩からこうこ、大根なます(油揚げのせ)/下:麦飯、しじみ汁
出典:桜井武雄 他編. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.221-222