山菜や貝が春を告げる――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年03月28日

聞き書 鹿児島の食事 鹿児島市(商家)の食より

花見のころになると、店員や女中さんたちの家から、たけのこやつわぶきなどが届けられ、木々の若芽も吹いてくる。谷山(海岸)のほうでは貝(二枚貝)がとれるようになり、磯で貝やびな(巻き貝)とりもはじまって、春のぬくもりが肌に伝わってくる。
夜――からいも入り麦ごはん、寄せなべ、したけの酢のもの
春とはいえまだ冷えるので、からだの温まる寄せなべをよくする。
寄せなべの汁は鶏のがらでだしをとり、鶏肉や豚肉、豆腐、白菜、しいたけなど材料を数多く入れるので味がよい。寄せなべをした翌朝は、この残り汁にごはんを入れ、おじやにして食べると、また格別においしい。
春は貝がおいしい季節なので、したけの酢のものをつくり、ほうれんそうをつけ合わせる。貝のほかにえびも味がよいので、伊勢えびを煮つけやフライにしたり、芝えびと豆腐を味噌んおっけにして、しゅんぎくをさっとゆでて浮かして食べたりする。

写真:春の夕食
左下3品:からいも入り麦ごはん、したけの酢のものとほうれんそう、たくあん漬/右:寄せなべ

 

出典:岡正 他編. 日本の食生活全集 46巻『聞き書 鹿児島の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.23-24

関連書籍詳細

日本の食生活全集46『聞き書 鹿児島の食事』

岡正 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540890055
発行日:1989/12
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

鹿児島は南方食文化の北端。いも・鶏・糸瓜・豚の調理に南方の食習慣が息づく。海上の味=ヤポネシア構想の主舞台の陽光あふれる南国の味。
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