聞き書 山口の食事 城下町萩の食より
■夕――えんどうごはん、ちしゃなます
えんどうごはんは麦を入れないで炊く。夕食に一日分をまとめて炊くことに変わりはない。
おかずは、たれくちいわし(かたくちいわし)を入れて、ちしゃなますをこしらえる。たれくちいわしはたんまりとれて値段も安い。萩沖でとれる代表的な魚である。この刺身を入れた、だいだい酢の酢味噌をたっぷりつくる。裏の畑からちしゃをかいてきて、酢味噌とともに飯台の上に出しておくと、めいめいが好きなだけとり、ちしゃに酢味噌をつけて食べる。ちしゃなますを食べると血がきれいになるといって、毎日のように食べる。
えんどうがないときは麦ごはんを炊く。このときのおかずには、ちしゃなますや、たけのことこんぶの煮もの、はすや小芋にこんにゃくを入れた煮しめ、唐菜とぶりのあらを煮たあら煮をよくつくる。また、たけのこの青あえも、畑の青々した大根葉とさんしょうで手間ひまかけてこしらえる。わらびをたんまり入れたおつゆや、萩沖でとれる、おこぜやぼてこの味噌汁もおいしい。
「あごがとれるほどにおいしい」といわれるあご(とびうお)もしゅんである。刺身やすり流し味噌汁をこしらえる。ふきとあごのすり流し煮は大変おいしく、生ぐさくないので、朝でも昼でもよいおかずになる。また七、八寸くらいのしびや一尺くらいのかつおは、刺身につくる。あさりやはまぐり、しじみはみつばやひともじ(あさつき)、さんしょうなどを入れて、おつゆや味噌汁にする。
写真:ちしゃなます
たれくちいわし入りの酢味噌をつけて食べる。
出典:中山清次 他編. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.286-287