田植えは20人にごちそうを出す――晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2023年05月29日

聞き書 宮崎の食事 米良山地の食より

田植え
六月は田植えが大仕事である。馬使い、鍬じろ、綱引き、苗運び、植え手、茶わかしと、手伝いの人を二〇人も雇い、それぞれ仕事を分担する。
朝はにぼしとお茶、漬物を出す。
馬使いは一番重労働で、朝はほかの者よりも早く田に出て、一一時ごろには昼食をする。そしてほかの者が昼休みをしているうちに仕事にとりかかる。
昼は白米のごはん、味噌汁はたけのこやじゃがいも、揚げ、ねぎなどを入れる。ゆず味噌や高菜の油炒めなどたくさんつくっておき、漬物と一緒に毎回出す。
夕食は赤飯、たけのこ、じゃがいも、にんじん、ごぼう、しいたけ、揚げ、こんぶの煮しめに必ず魚を添える。尾頭づきといって、唐人干しか、あゆやいだなどの川魚のひぼかしを味つけして煮て添える。稲がよく育つようにという願いをこめてごちそうをつくる。きゅうりやわかめの酢のものに、焼酎かどぶろくを出して労をねぎらう。
雇った人たちの日役(賃金)は米で、男二升五合、女一升五合である。田植えの日に働く人の半分以上は手ごり(労働の交換)である。
田植えをして一週間後には草取りがはじまる。もとがきといって、稲の間を手でかきながら全部の田んぼをすます。石垣の草、あぜの草むしりなどもあり、きつい仕事が続く。

写真:田植えの晩のごちそう
膳内:〔上〕煮しめとあゆのひぼかしの煮たもの/〔下〕赤飯、酢のもの(きゅうり、わかめ)/丸盆の上は焼酎

 

出典:田中熊雄 他編. 日本の食生活全集 45巻『聞き書 宮崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.121-123

関連書籍詳細

日本の食生活全集45『聞き書 宮崎の食事』

田中熊雄 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540901010
発行日:1991/3
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

伝説に彩られた山深き里、古来「日向の国」と呼ばれた太陽の国・宮崎。焼き畑の村に、陽光そそぐ平野に、霧島のぞむシラスの台地に、黒磯洗う浜に、なつかしい食と暮らしをたずねた南国の食の記録。
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