聞き書 宮崎の食事 米良山地の食より
■田植え
六月は田植えが大仕事である。馬使い、鍬じろ、綱引き、苗運び、植え手、茶わかしと、手伝いの人を二〇人も雇い、それぞれ仕事を分担する。
朝はにぼしとお茶、漬物を出す。
馬使いは一番重労働で、朝はほかの者よりも早く田に出て、一一時ごろには昼食をする。そしてほかの者が昼休みをしているうちに仕事にとりかかる。
昼は白米のごはん、味噌汁はたけのこやじゃがいも、揚げ、ねぎなどを入れる。ゆず味噌や高菜の油炒めなどたくさんつくっておき、漬物と一緒に毎回出す。
夕食は赤飯、たけのこ、じゃがいも、にんじん、ごぼう、しいたけ、揚げ、こんぶの煮しめに必ず魚を添える。尾頭づきといって、唐人干しか、あゆやいだなどの川魚のひぼかしを味つけして煮て添える。稲がよく育つようにという願いをこめてごちそうをつくる。きゅうりやわかめの酢のものに、焼酎かどぶろくを出して労をねぎらう。
雇った人たちの日役(賃金)は米で、男二升五合、女一升五合である。田植えの日に働く人の半分以上は手ごり(労働の交換)である。
田植えをして一週間後には草取りがはじまる。もとがきといって、稲の間を手でかきながら全部の田んぼをすます。石垣の草、あぜの草むしりなどもあり、きつい仕事が続く。
写真:田植えの晩のごちそう
膳内:〔上〕煮しめとあゆのひぼかしの煮たもの/〔下〕赤飯、酢のもの(きゅうり、わかめ)/丸盆の上は焼酎
出典:田中熊雄 他編. 日本の食生活全集 45巻『聞き書 宮崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.121-123