聞き書 石川の食事 金沢商家の食より
うなぎやどじょうは土用の丑の日に食べるのがならわしであるが、近江町市場へ行くと、うなぎのかば焼きや生きたどじょうを毎日買うことができる。どじょうはどじょう汁や柳川に、うなぎもかば焼きや柳川にして、通いの職人たちの持ってくる弁当にも添え、夏ばてしないよう気配りを欠かさない。
■昼――白飯、こぞくらの塩焼き、なすのそうめんかけ、漬物
暑い日は食欲も落ちるから、口当たりのよいそうめんをよくつくる。そうめんの上に、味つけしたしいたけ、あじ、たいの身などをのせ、しょうがを添えて、あじやたいでとっただし汁を冷たく冷やしたものをかけていただく。どじょうのかば焼きをのせることもある。
ふだん、お昼にはお汁をつけないが、職人の夏ばて解消にどじょう汁をよくつくる。どじょうを酒と一緒になべに入れてふたをして、酒に酔わせておき、粕汁の中に入れ、醤油で味つけし、ささがきごぼうを入れ、ねぎを散らす。
このほか、おかずを二品か三品組み合わせてつくる。魚料理は、こぞくらの塩焼きや煮つけ、はねの塩焼き、きすの煮つけ、ねじらがれいの煮つけ、こんかにしん(ぬか漬のにしん)などである。こんかにしんはそのままでも食べられるが、焼いても食べる。煮魚の場合、その汁でなすやじゃがいも、ねぎを煮てつけ合わせにする。
なすのそうめんかけ、なすのオランダ煮も夏よくつくる。なすのそうめんかけは、こぞくら、かれい、きすなどの魚を醤油と酒、水で煮た煮汁でなすを煮含め、ゆでたそうめんを入れて一煮たちさせたものである。オランダ煮は、塩ゆでしたなすを、水、醤油、赤砂糖でつやの出るまで煮て、最後に酒を加えて仕あげる。冷たくして食べると口当たりもよく食も進む。
さらに、なすのでんがく、かたうりのあんかけ、じゃがいもとにしんの煮もの、かぼちゃの煮もの、ちくはべん(焼きちくわ)、豆腐のやっこなども一品つくる。
漬物は、きゅうり、なす、みょうがの宿漬を添える。
写真:夏の昼食
上:うなぎのかば焼きと大根おろし/中:なすときゅうりの宿漬/下:白飯、なすのそうめんかけ
出典:守田良子 他編. 日本の食生活全集 17巻『聞き書 石川の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.27-30