聞き書 和歌山の食事 熊野灘の食より
■夕――麦ごはん、魚の煮つけ、いもの葉の煮つけ、きゅうりのどぶ漬
磯のすぐ沖で、夕まじみ(夕暮れどき)にちんちろいかが釣れるので、四時ごろから漕ぎ出して、庭先へでも行く気で四、五〇ぴき釣ってくる。
女衆はときには米を少し多めにして早どりの里芋を少し入れ、麦ごはんを炊く。磯魚をつくりや煮つけにし、あらも煮つけたりおつけに入れたりする。漬物はきゅうり、なすび、むいたいものつるのどぶ漬。そのほか、いもの葉やかぼちゃを煮つけたりして用意する。
そこへ男衆が帰ってきたら、すぐちんちろいかをゆでて輪切りにし、ぬくぬくを添える。明日のおかず用に煮つけてもおく。
夕飯がすんで、たのもと(台所仕事)が終わっても日は暮れないので、せせなぎ(台所の排水)を畑にやったり、明日の食事の用意をしたりと女衆は忙しい。夕飯後、ところてんをごま酢で食べたりする。
写真:夏の夕飯
里芋入りごはん、野菜のごった煮(根ものを、めじかのだしで煮る)、きゅうりとなすびのどぶ漬
出典:安藤精一 他編. 日本の食生活全集 30巻『聞き書 和歌山の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.235-237