聞き書 奈良の食事 奥宇陀の食より
貧しくても豊かでも奥宇陀の一日は茶がゆではじまる。茶がゆは、前日の朝、麦をよましておいて、夕はん後に翌朝分のかゆを炊いておくが、それでも夏は朝の四時には、もう朝ごはんのしたくをしなければならない。飼っている牛のほうが人間よりもええなあと思う。洗濯は夕べのうちにすませておく。夏は必ずけんずいもいるので、朝は少しのひまになんば(とうもろこし)をゆでたり、かぼちゃや二度いもを塩炊きしておく。
■朝ごはん――かぼちゃ入りの茶がゆ、なすのどぶ漬(ぬか漬)、川魚の焼いたん
夏の茶がゆの実には、毎日のようにかぼちゃが入る。子どもたちが川遊びでとってくるあめご(あまご)などの魚は、一度焼いてわらづとにさして乾燥させておく。食べるときにもう一度焼きなおしたり煮たりして食べる。
写真:夏の朝ごはん
あめごの焼いたん、茶がゆ、なすのどぶ漬
出典:藤本幸平 他編. 日本の食生活全集 29巻『聞き書 奈良の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.180-182