聞き書 岡山の食事 中国山地の食より
■秋の夕食
十月下旬には、そろそろ冬ごもりの準備にかかる。「菜とり」といって、大根、菜っぱ類をとりこんで貯蔵したり、漬けこむ。
とくに、しゃくしご菜は、使い古しの歯ブラシで泥をきれいに落とさなければならないので、難儀である。流れ川で菜っぱを洗う作業は二日間かかるが、とても冷たいので、湯をわかしたなべをそばに置いておき、その中に手を入れて温めながら洗う。こうして洗ったしゃくしご菜は、ほぼ一日で漬けることができる。毎年、本漬けしたもので四斗樽二本くらいはつくる。
大根は、くず大根と、大きくて素性のよいものとに分ける。くず大根で、切干し大根やせん切り大根をつくり、大きくてよい大根は、春先まで葉いけ(生貯蔵)にし、必要なときに使う。
切干し大根は、夜なべ仕事にくず大根を洗い、皮をむいて長さ約一寸五分、幅約一寸に切り、天気のよい日に蒸してすぐ天日乾燥する。一斗缶に半分くらいできる。せん切り大根は、生の大根を夜なべ仕事に菜ふき(大根つき)でついて、そうき(ざる)で一晩水切りした後、天日で干す。これは、一斗缶に四分の一くらいつくる。いずれも煮ものの材料として重宝である。
写真:秋の夕食
上:しゃくしご菜と大根の漬物、煮もの(大根、ずいきいも、にんじん、ふき、油揚げ)/下:白飯、味噌汁(ずいきいも、大根、ねぎ)
出典:鶴藤鹿忠 他編. 日本の食生活全集 33巻『聞き書 岡山の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.257-260